2025.11.12

■吉野林業全書から学ぶ 
53_杉の木質種類とその用途③

【真目疎大木(まめあら)】
密植ではなく植付けが疎植であったものが表土が肥沃なところに成長したもので、植付け後20年位までは成長が速いがその後は間伐しないため、樹木が自然に委縮して木目のみが細かく密になったものである。この木は樽丸製造用に適している。

【瘠深木(せぶか)】
白太の多いものの多くは表土は浅いが、肥沃な場所に成育したものが多い。木目は整っているので材積は少し減るが、樽丸製材用にして問題はない。

【木目密なる木(密目木)】
土壌が赤色で肥沃でない痩せ地に成育するもので、木目は極めて密である。この中で木目が整い紅色を帯びたものは樽丸に用いられる。

【木目疎大木(めあら)】
植付けが疎植で肥沃な土地に成育したものである。そのため成育が速く木質は不良で、荷重力も弱い下等材である。樽丸や薄板には不適当で需要もほぼないので、厚板にして床板とする。

【柾閉木(まさとじ)】
土壌の良し悪しには関係なく、風害の多い所に成育したもので、柾目が閉じて木目が正しく並び通っていないものである。この木は木目が普通なものは板類に用いられるが、樽丸にするには利用部分が少なく不適当である。

【脂木(あぶら)】
表土が浅く、岩石のある山の尾根筋などの常に風害を受ける場所に成育したもので、多量の樹脂を出して外部を傷つけるため、その成育が阻害されたものである。この木はあまりよくないので製造用には用いられない。杉皮も脂が多いため使用されない。小径木はいろいろと利用されるが、大木では利用価値がない。

吉野杉

 
参照:吉野林業全書
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【木目疎大木(めあら)】のところで、荷重力も弱い下等材などと解説されていますが、身近なところでも、木の木目も入っていないような安い割箸はすぐに折れてしまいます。やはり木目が粗い材料と木目が詰まった材料では、後者のほうが強いわけです。

そうなると、感覚的にやわらかい杉よりも桧を使った方が良いのではと思われますが、ヤング係数 E70以上の吉野杉の構造材を用意して、せん断試験を行ってみると同等の桧と数値は変わらず、非常に粘り強さを持った材料であるとの結果が得られます。

品質確保が確実に行われていれば、吉野杉は強さと美しさを兼ね備えた木材であると言えます。

 


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