2025.9.3

■吉野林業全書から学ぶ 
44_山林保護のための山役金制度③

土倉庄三郎は明治21年から群馬県渋川村字大野原野の官有地を借用し、杉・桧の苗木およそ200万本を植付け、奈良県吉野郡同様の方法で規則を定め、山役金についても地元農民へ配分する契約を行った。その管理方法についてもとりたてて細かなことを言わなかったが、双方の考えは通じ合い火災の心配は全くなかったということだ。火災予防に実績をあげた一例である。

つまり、森林愛護精神を強くさせる理由を追求していくと、適切な山役金の運用こそが良い結果を生んでいることがわかる。

また、山役金はただ火災予防のみではなく、盗木被害を防ぐことにもなる。その地元農民の全てに森林愛護精神が広がり、自ら森林監守の気持ちで巡視することになり、自分のものを自分で盗む道理がなくなり盗木の心配はなくなるのである。

しかし、明治維新後、立木売買に表向きの根拠がなく、売買上の揉め事が起こり買い主に対する不信感にもつながる。それにより、明治21年に奈良県吉野郡全体で当局に対し立木登記について請願されると、特許を得て一つの法規が定められるに至った。

奈良県吉野郡に限り、立木一代限りまたは年期売買について登記公証を行うこととなったのである。それ以降、立木売買について二重転売等の弊害もなくなり、買い主の信用も厚くなり立木を一層保護する傾向を生じたのである。

我が吉野林業が益々盛大に発展してきた理由を要約すれば、材木保護が行き届き、火災・盗害の心配もなく、植林が財産として安全性のあることが広まった。

すると、吉野の杉・桧の山林を他郡の者が次々と所有し、さらに大和国(奈良県)はもちろん遠く各府県の造林家が吉野の土地を借り受け、杉・桧の苗木を植付けたり、20~30年もしくは50~60年の立木を買い求めて所有するものが後を絶たなくなり、誰よりも先にと競って造林を始めたということである。

山役金制度は森林愛護と福祉精神を兼ねているので、この制度をしっかり運用することがこのような大成果につながっていると思われる。

吉野杉

 
参照:吉野林業全書
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現在では、こういった山役金制度といったものはすでになくなっていますが、山を守るにはやはり「お金」が必要です。

ただただ丸太を出荷すれば高値で取引された時代はとうの昔に終焉していますので、新しい販売先、新しい販売方法をしっかり確立していかなければなりません。

まったく簡単なことではありませんが、逆に固定観念に囚われなければチャンスはたくさん転がっているはずです。

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