2025.11.14

■吉野林業全書から学ぶ 
54_杉の木質種類とその用途④

【捻木(ねじ)】
土地の良し悪しに関係なく、実生苗の生育が悪いために生じたもので劣等の木材である。この木は色味がどうであれ樽丸製造用には不適当で、丸太か角材として建築用材に用いる。

【疵腐木(きずぐされ)】
土地の良し悪しに関係なく、外部から傷を受けそれが自然に腐ったものである。その傷は岩石が落ちて当たったもの、間伐の際に誤って傷を付けたもの、出材時に傷を付けてしまったものといった他に、キツツキが穴を開けその穴から雨水が侵入して腐れが生じ、さらにこの穴にムササビが住み着いて腐れを広げるなど、様々な要因がある。
外部からの損傷によってできた疵腐れは、百年生の頃に使用すれば格別害のあるものではない。しかし、それ以上経過すると芯目に腐れが入り込んで、ついにはウド木となってしまう。この木は樽丸製造用でうまく利用すれば、利用材積は減っても利益をあげることが可能である。

【馬木(うま、あて)】
植付けの不注意や風雪などにより、横に傾いたまま成育したものである。これらは植栽後の保護が行き届いていないために生じる害であり、常に保護は怠ってはならないのである。この木を樽丸製造用にするのは困難で材積もかせぐことができない粗悪木である。しかし、曲がりを上にして両端を柱にはめ、真ん中は柱を用いず架け渡し、その上に束柱を立てて上から荷重を持たせる建築用材の中牛木(登り木)には適している。

【目切木(めきれ)】
土地の良し悪しに関わらず植付け後10年ないし15年の頃に、手入れが行き届かずクズフジなどが巻き付いて曲がったまま成育したものである。この木は木目が通らないから板類に用いるのは支障があるので、丸太のままで使用するのが良い。

【モミ割木】
岩石地に成育したものや、寒さで水分が凍結した時に、風に煽られ幹の真ん中まで割れ目を通してしまったものである。この木は粗悪木で樽丸製造用には不適当であるが、家屋の土台等にはわずかに用いられる。

【目廻り木】
土質の良し悪しに関わらず強風被害を受ける所に成育したもので、自然と木目の間に離れを生じてしまっているものである。この木は樽丸製造用には一切用いられず、その他の用材にも使いにくいものでわずかに丸太のまま使用される劣等木である。

吉野杉

 
参照:吉野林業全書
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杉材の木質種類とその用途については以上となりますが、ほとんどが樽丸製造用に適しているかどうかが基準にされています。樽丸生産の需要がなくなった後は、内装材を中心とした高級建材にその吉野杉の生産基準がうまく引き継がれていきました。

樽丸や高級建材といった爆発的な需要が薄れてしまった現在、吉野林業は変わらなければならないのか、それとも、高樹齢の大径木への新たなニーズを探り続けるべきなのか。大変難しい状況だと思います。


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