2025.10.11

■吉野林業全書から学ぶ 
49_杉・桧の皆伐の方法

杉・桧の山林は、通常100年から110年の間に適当な時期を見計らって皆伐しなければならない。その季節は夏の土用が良い。

伐採する順序は山の頂上から伐り始め、大鋸で追い口(伐り倒す反対の方向)から挽き、その挽き目にカシ材の楔(長さ18㎝幅9㎝)をはめ手頃な小槌で打ち込む。受け口(木を伐り倒す方向)は、伐根直径のおよそ4分の1程伐り込み追い口は鋸で挽き、徐々に楔を打ち込んで山の高い方へ倒す。俗に登し伐り(上方伐倒)と言う。

もし危険な場所で伐倒しにくい場合は、まず細綱(長さ30m弱・重さ約400g)の端に100g程度の石をつけ、伐倒する木の中間の枝に投げ掛ける。これで細綱は石の重みで当然下がってくるので、この石をつかんで一方に手繰りその端に大綱(長さ30m弱・重さ7.5㎏)を結んで繋ぐ。

この大綱を手繰って細綱を取り去り大綱の一方の端を60㎝位の輪に結び、この中へ一方の端を入れてこの輪を放して一方に引っ張る。これを輪結い、またはズルズルと言う。

そして、その端を木の伐り倒す方向の遠くへ結びつけておき、木が倒れようとする時にこの綱を引っ張って引き倒す。それでもなお倒れない場合は、大綱に車(飛び車とも言う)をつけ適当な所で引っ張って倒す。

皆伐の際に立て木または締め木というものがある。樹木の中で最も生育が良くかつ木質の良いものを選んで、これを伐採しないでおくのである。

その山の広さに応じて1ヶ所に数本、または数十本を残しておく。これは後年になり二代木といって、帆柱や天井板等に用いられ非常に高値で取引される。

吉野杉

 
参照:吉野林業全書
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現在の吉野林業において、100年~110年のサイクルで皆伐を実施することはほぼありません。木材価格の大下落による出材量の激減、林業施業従事者の減少、様々な理由はあります。外材や新建材の台頭で国産無垢材は使われなくなり、使い方を知る人も減り、様々な規制は木を使えなくしている、という散々な状況も続いています。

そんな状況で「国産材を使おう!」…

持続可能な吉野林業を目指すには、川上~川中~川下、すべての場面でイノベーションが必須となるのでしょうが、はたしてスマート林業なるものが当てはまるとも思えません。樽丸や住宅建材に変わる爆発的な需要を生み出すことも容易ではありません。

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