2024.7.15
■吉野林業全書から学ぶ
5_吉野杉の発端検証①
『吉野林業全書』において、奈良県川上村での杉・桧の人工造林のはじまりを524年前の文亀年間(1501~03年)としていましたが、それが推測できるものとして、川上村では永禄年間(1558~70年)には、80~100年生の杉から製造する曽木(屋根用の板)の生産拡張を目的とした口銀が徴収されていた記録があります。
そのことから、
☑中世と近世の転換期といえるこの時期に、すでにある程度の規模の林業が行われていた。
☑その生産は商品生産を目的としており、その担い手は川上村民であった。
☑曽木の生産拡張を目的とした口銀徴収には、必然的に林業振興が含まれていた。
といったことが指摘できます。
参照:川上村史 通史編
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吉野林業の始まりを古い文献から導いていますので、記録がはっきりしないだけで約500年より以前の歴史があるのではないかと考えたくもなりますが、吉野には古くから離宮が置かれることがあり、「大峰山の地下は黄金の浄土である」といった黄金伝承も存在し、神聖な場所であるとされていたことが、大規模な伐出を困難にしていたようなのです。
また、古代に木材生産が盛んであった場所が、有名林業地になったところはなく、耕地化、荘園化されたり、場所によっては禿山になるケースもあったそうで、そういった森林の乱開発を免れたことが、中世に豊富な森林資源を引き継ぐことができたともみることができるようです。