2025.6.12

■吉野林業全書から学ぶ 
34_杉・桧苗木の植付けとその季節③

杉・桧の苗木の植付けは、1町歩(約3,000坪)に対して苗木10,000本を植え付けるのが通例であるが、土地の性質の良し悪しと木材運搬が容易であるかなどにより多少の加減はある。また地方の慣習によってはその粗密度を加減することもある。

1町歩に20,000本~30,000本の密植をするところがあるが、植付け後12、3年目から30年目までは間伐材による収益を多く得たとしても、枯損木も多く幼齢の時から勢力は衰えて生育は遅れるので、100年後の計算をしてみると、結局、材積も少なく利益も少ないことになる。

これに対して、1町歩に300本~1,000本の疎植を行うところもあるが、これは植付け後、数年もしくは10年後も雑草が繁茂しツタやフジが蔓延し、その手入れに多大な費用が掛かる。しかも下枝が落ちないため根元ばかり太って伸長せず、桐のような木目で節も多く木目は粗大、木質は粗悪で品質は劣等になる。

その上に間伐材収益も少なく、良材となるべきものも優勝劣敗がはなはだしく、かえって多くの枯損木が生じてしまう。結局、密植の場合より利益はずいぶんと少なくなる。しかも少数の立木に広大な土地を要し、ほとんど自然林と同様になってしまうので決して良いとは言い難い。

吉野杉

 
参照:吉野林業全書
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通例とされている10,000本/㏊は吉野林業の植付け方法で、一般的には2,000~3,000本/haが標準的とされています。その上で、20,000本~30,000本/haという超密植の事例が挙げられていますが、吉野林業の密植でもかなりの数量だと思いますので、その2倍3倍とは驚きの数字です。

吉野林業最盛期において、資本家たちに山を買い取ってもらうには、苗木が植付けられている量が多ければ多いほど価値が高くなるといった話もあり、そういった観点ではある意味納得の数字であるかもしれませんが…

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